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事例紹介詳細
KB’S WEB Vol.55 2025

【西日本特集】未来へのヒントとなる、老舗サロンの現在
地域の美容を支え続けた4サロン。ビジネスを超えた絆が、本当の価値を生む
今回取材したのは、西日本の4つの地域で人気の老舗サロンオーナー。いずれも「美容業界を牽引するのは大都市圏」という認識が一般的であった数十年前に創業し、現在に至るまで地域の一流店であり続けている店舗です。 技術の高さに定評があるのはもちろん、サロンの顧客と美容室、従業員とオーナーという関係性にとどまらず、地域や人との繋がりを築いてきました。本特集では、未来のサロンのありかたや経営の価値観を考えるヒントとなる、各サロンの取り組みをご紹介します。
職業・美容の“夢”をもっと安心して見られるものに。
お客さまや地域とサロンの絆を育て、持続させる
1968年に創業し、郊外立地の大規模店として業界で話題になった「おしゃれキャット」が前身のLASSIC HAIR。「お客さまの進学や就職、結婚など人生に関わるのが美容。この関係性を一生のものにしたいです」(村上さん)
そのために大切にしているのが、美容師が安心し働き続けられるサロンであること。背景には独立や引退でお客さまとの関係が途絶えるのは残念という想いがあります。「経営面でも、ベテランが在籍することで技術の継承が円滑に進むため安定します」
労働環境や待遇、モチベーション向上に早期から取り組み、高いスタッフ定着率を実現しました。
人材確保にも力を入れ、高卒者を積極的に採用。「経済的な理由で進学が難しい方には、通信教育での免許取得を補助金で支援しながら働いてもらいます」
中学生・高校生の職場体験の受け入れや特別授業を実施し、美容師は厳しい仕事というイメージを打破。働きがいや夢を伝えてきました。美容師志望ではない学生にとっても将来の夢を考える機会となっています。
美容室以外にネイルやエステ、カフェや地元産の材料を使ったスイーツ販売も行っているのも特徴的。いずれも担当者は元受付スタッフです。「将来、機械化が進んでも受付スタッフが働き続けられるように、自分のお客さまを持ち技術を提供して欲しくて、資格取得を支援しました」
ヘアアレンジ教室や成人式の着付け、介護施設でのカットなどサロン業務以外での活動にも力を入れ、お客さまや地域への多様な関わり方で価値を提供することで、さらに関係性を深めています。
LASSIC HAIR 三木本店
兵庫県三木市福井1969-2
0794-82-5505
https://lassic-hair.com
“創業30年”からのコンセプト変更。
女性の人生に寄り添い続ける存在に
8店舗を展開するannが位置する大阪南部は賑やかな人情の街。「技術だけでなくフレンドリーなノリも求められる土地柄です」(築林さん) 創業時のコンセプトは “美容室のディズニーランド”。キラキラの内装にしてスタッフは芸名で呼ぶなど若々しく元気な雰囲気でした。
それから20年以上経過し、お客さまもスタッフも歳を重ねた約8年前。元気で楽しいだけではない新たな魅力をと考え“シャイなあなたにカジュアルガーリー”にリブランディングしました。「明るいお客さまも実は自分の希望を言いにくい、など本質的な部分でシャイなのでは?という仮説がありました」
店舗レイアウトを工夫しカウンセリング方法も検討。話しやすい雰囲気のカウンセリングスペースでまずはお悩みを聞き、そこから本音を引き出し、資生堂のメソッドも取り入れてベストな提案ができる仕組みを作りました。
同時に人事評価の軸を成長欲求からお客さまへの貢献欲求に変更。入社後は4年間、テクニックやデザインのほかビジネス、ヒューマンスキルの4つの軸で育成します。
就業時間内に研修時間を確保していますが、これはお客さまがannに信頼があり、稼働時間が短くても満足できているからこそ。店舗運営や売上に影響が出ない体制づくりは働きやすさにも繋がっています。
約10年前から親子で安心して来店できる店舗づくりにも取り組んでおり、キッズスペースを設置しているほか、子育て中のお客様が多い店舗には保育士が在籍しています。「スタッフもお客さまも女性が9割で、今は双方に子育て経験者が増えました。忙しいお客さまのお悩みを分かち合えて、段取りの良さや安心感のある接客は私達の強み。女性の人生に伴走するサロンであり続けます」
ann hearts
大阪府堺市堺区向陵中町4-5-27 中谷ビル 1F
072-257-2628
https://www.annweb.co.jp/
獅子舞や古着店など、サロン外での多様な活動。
「やりたい」想いを軸にした、真に豊かな美容人生
倉敷市内から広くお客さまが集まるbaho IZM。1997年の立ち上げ後9年で5店舗まで急速に拡大しました。「当時は“お店は成長するもの”と考えていましたし良い経験ですが、今は一般的な成功が自分やスタッフにとって本当の価値とは限らないと感じます」(木下さん) 現在はサロン1店舗に集約しました。
baho IZMの特徴はサロンワークや美容に限らない教育や活動。
「スタッフの多様性を大切にし、教育がサロンの都合にならないようにしています。求める人物像を決めた方が経営側は楽ですが、価値観の違いを知り乗り越えることが面白いんです」 スタッフとは技術指導やヘアスタイルだけでなく、流行とは何か、芸術とは何かなどのテーマも話し合います。
サロン外の活動として、約 14年取り組んでいる獅子舞があります。2011年の震災時「自分たちにできることをしたい」と、獅子舞と楽器を習うところから始め、“倉敷芸能塾”を立ち上げ。音楽や演出・衣装などは全て自分たちで準備し、慰問や義援金を募る公演を行なってきました。昨年行われたヘアショーでも獅子舞を融合させ、不死鳥をテーマに「夢を諦めない」メッセージを表現しました。
2021年にはサロンスタッフが接客する古着店「dub dumb do 9」をオープン。撮影に使いたい理想の服がなかなか見つからなかったことが開店のきっかけですが、現在は唯一無二の服との出会いを提供する場となっています。
「お客さまには、美をトータルでサポートしたい。スタッフにはさまざまな経験をして真の豊かさを知り、やりたいことを叶えてほしいです」 木下さん自身の「やりたいこと」を叶える姿が、baho IZMを心地よくし、多くの方を惹きつけているといえます。
Baho IZM
岡山県倉敷市平田 84 -1
086-421-8011
https://www.baho80.com/
「本物の美容師」を追い続けて、40年。
美容業界の未来を照らす「教育型サロン」の真髄
1986 年、広島市の並木通りに「広島で一番かっこいい美容室を創りたい」 そんな想いからスタートしたSNOB。いま、日本の美容室の5年後の生存率は50%以下とも言われ時代と共に流行も変わり、働き方も多様化するなか、 SNOBは来年創業40周年という節目を迎えます。
「美容師としての真髄を、学び続ける場を」 SNOBが一貫して大切にしてきたのは、教育。そして、その教育の核となるのが、「お客さまの期待を超える提案ができる美容師」の育成。「美容は流行産業です。だからこそ、知識も技術も、その時代に合わせて常にアップデートしていかないといけない」 そう語るのは、SNOB 代表の城戸和雄氏。
新しいメニューの導入を見直すことはもちろん、何より大切なのは、カラー・カット・スタイリングすべてにおいて“誰にも負けない技術”を身につけること。そのうえで、自分だけの「オリジナル」を武器に、美容師としての価値を高めていく。SNOBでは、スタイリスト一人ひとりが+αのデザインや提案ができるようになるまで、徹底的に育てています。
「自由な時代」だからこそ、見える本質。コロナ禍をきっかけに、美容業界でも働き方改革が加速。フリーランス美容師 や面貸しサロンも増え、より個人の選択が尊重される時代になってきました。
そのなかで、SNOBが貫いているのは、「チームで学び続ける場の価値」。「どんな時代でも、最後に信頼されるのは“本質を学んでいる人”だと思います。技術力はもちろん、お客さまへの姿勢、人との関わり方。そういう土台があるからこそ、長く愛される美容師になれる」
一人ひとりが個性を活かしつつ、仲間と共に高め合える。SNOBは、そんな教育環境を通じて、スタッフもお客さまも、そして業界全体も“豊かになる”未来を描いています。
目指すのは、業界の社会的地位の底上げ。「美容師って、かっこいいよね」そう、若い世代に胸を張って言ってもらえるような業界でありたい。SNOBの教育には、そんな想いが込められています。
“本物の美容師”とは、単に技術があるだけではなく、お客さまの人生に寄り添い、デザインを通して未来を提案できる存在。そのためにSNOBは、これからも本物の美容師を育てる教育システムを磨き続けています。40年の節目を迎える今も、その挑戦に終わりはありません。
SNOB
広島県広島市中区三川町 4-9 2F
082-542-0257
https://snob-hair.com

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