CASE
事例紹介詳細
KB’S WEB Vol.56 2025
【北日本特集】北日本の4サロンが向き合う「地方だからこそ」未来の美容・社会のヒントとなる取り組み
今回、北日本の4つの地域の特色あるサロンオーナーを取材して感じたのは、情報化社会の現在、「東京と同じことができる」を超えて「地方だからこそ」の価値創出や挑戦の機会が数多くあるということです。
たとえば、「地元を盛り上げたい」という共通の想いに基づく、同業・異業種の方との交流やコラボレーション。都市部での経験をノウハウとして地元の美容室に広めること。広い店舗だからこそできる設計へのこだわりや設備導入、他の美容サービスの展開。挑戦の内容はそれぞれ、多岐に渡ります。また、全体として、アピアランスケアなど社会福祉関連の取り組みや、人材確保・育成、組織強化への意識の高さが印象的です。地域や人との絆の強さを感じた取材でした。
今回の特集では、4つのサロンそれぞれが、自身の強みを活かした価値の提供や、今後美容業界のみならず、社会全体が直面する課題にいち早く向き合う姿をご紹介します。

Nyu+Z SALON
代表取締役 山下 大器さん
出身地の奈良から北海道に移住し、美容室をオープンした山下さん。「1号店がある小樽は、地元の人の絆が強く技術だけでは選ばれるのは難しい。最初は人に馴染む努力が大切でした」 3年目にコンテストに出場。メディアへの掲載が転機となり、お客様もスタッフも増えました。小樽の若者は札幌に出ていくことが多いのですが『小樽でも素敵なお店がある』『地元で働ける』と評判が広まったためです。周辺地域の美容師に仲間が増えたことで札幌進出を実現し、現在は3店舗を経営。それぞれ異なるコンセプトとし、現場のスタッフに任せることを大切にしています。ヘアサロンと同じ店舗内にマツエクサロンを設けることで、アシスタントの定着率向上や、キャリアの幅の拡大にも取り組んでいます。
美容師同士の交流がきっかけとなり、コンテストへの参加支援も始めました。「北海道は東京から遠く、コンテストへのハードルが高かったのです。そこで周辺の美容室にお声がけし、これまでの自分のノウハウを活かしてモデルやカメラマンを呼び撮影会を開催。札幌でのコンテストの審査員や主催も務めました」 運営は大変でしたが、意欲ある若手が成長する姿を見ることができ、今や北海道で業界の顔となった美容師もいるそうです。
本業の美容室経営では、意外なことにチラシの集客効果が高いとのこと。SNSで遠方からも集客できる時代ですが、できれば近所の美容室に通いたいというニーズがあるようです。「地域のお客様を大切に育てていくため、スタッフに伝えているのは『お客様に慣れない』こと。常に丁寧に、説明は省かない、お客様の要望はしっかり聞き、思い込みで接客をしないという基本を徹底しています」
Nyu+Z SALON
北海道札幌市中央区南2条西24丁目2-19 1F
011-215-7870
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000332538

HANAI hair design
代表取締役 石井 宗太さん
仙台市中心部のサロンに15年間勤務した後、偶然通りがかった富沢エリアの美しい街並みに惹かれサロンをオープンした石井さん。「出産したお客様がサロン通いを諦めてしまうのを見て、楽な気持ちで来れるお店を作ろうと考えました。駐車場完備かつ1階で開業できたのは郊外立地だからこそですね」肩の力が抜けて心から癒されるような、あたたかみある雰囲気のサロンです。
バリアフリーでシャンプー台も備わる個室のスペースは子育て中の方のほか、車椅子の方や高齢の方にとっても快適。今後の高齢化社会を見据えています。「以前から介護施設で訪問カットをしており、職員の方から『髪を整えると利用者様の表情が明るくなり食欲も増す』と聞きました。外出するとさらに良い刺激になるのでは?と考え、施設や介護タクシーと連携した来店支援を始めることに。綺麗になって施設に帰ると他の入居者の方も喜ぶそうです」
石井さんが大切にしているのは、一般的な美容師やサロンのあり方にとらわれないこと。もちろん最新技術やトレンドは積極的に取り入れていますが、ヘアマニキュアやノンジアミンカラーなど他店での扱いが少ないメニューも提供しており、ニーズがあるといいます。
お客様を喜ばせる工夫は技術だけではありません。「せっかく綺麗になった今日は料理をしたくない」というお客様の一言から、地元カレー店と連携したテイクアウト販売を始めました。「今後は、待ち時間に店販の商品を自由に試せるスペースを作りたいですね。美容室に来る日は楽しく、帰るときには素敵な映画を見た後のような気分になって欲しいです」
HANAI hair design
宮城県仙台市太白区大野田5丁目32-5 ルイーネ富沢102
022-707-7358
https://beauty.rakuten.co.jp/s6000020752/

有限会社 ザック
代表取締役 江原 俊男さん
今年春に「Rira」をオープン、上田市・東御市に3店舗を展開する江原さん。「お客様が来店し五感で感じること、すべてが上質であることにこだわっています」(江原さん) 店舗の外観や内装は見た目のデザインだけでなく、レンガや瓦、木などの素材を使用。地元のヘアケアブランドやメトリック浄水などを取り入れるなど、細部まで「本物」であることを追求しています。
経営で最も重視するのは教育。地方の美容室は人材難の悩みが多い中、スタッフの定着率は80%以上。どんな人材も育てきるという覚悟があります。都心の一流サロンやメーカーの講習など技術的に成長できる環境を整えているほか、ヒューマンスキルの向上に力を入れています。
「お客様ともスタッフ間も人間関係が仕事の基本。社是の『教えられて・教えて 助けられて・助けて』を軸に、一方的な指導ではなくスタッフ同士で影響を与え高めあう環境をつくってきました。家族のように関わりながら、目標設定は従業員が行うなど自律を大切にしています。ルールで固められると身構えてしまいますが、社風は心地よく感じられるものです」
このような経営には、江原さん自身が他の美容室や異業種の経営者との幅広い交流から得た本質的な学びが活きています。スタッフの成長や労働環境などの満足があってこそ、お客様の満足へとつながると考え、月に1度丸1日の研修や完全週休2日制などを実施していますが、実際にお客様からの信頼が厚く、売上は安定しています。
直近の目標は5店舗の出店、各地域でNo.1の美容室。「昔から50人規模の組織を目指していますが目標ありきで動くのではなく、人の成長が最優先。今の私たちは小さくいけれど強い組織です」
Rira
長野県上田市中央6丁目18-13
0268-75-8885
https://www.harezack.com

取材した人
HANABUSA 御経塚店
取締役 副社長 山本 恵司さん
美容室のほか、ネイルサロンや頭皮ケア専門店など計6店舗を展開し、お客さまに最先端の美を届けるための設備やメニューが高い評価を得ているHANABUSA。組織としては女性幹部の多さが特徴です。美容師をしながら経理やマーケティング、教育、クリエイティブなどに兼務で携われる体制を整備してきました。「一般的に、多くの優れた女性美容師がキャリアの壁に直面し、経営側も結婚や出産・育児・体調の変化をリスクと捉えているのを見てきました。私たちはマルチタスクが得意など女性の強みを活かして、人生の奥行きと幅を広げ活躍できる場を作っています」(山本さん)
「誰か個人ではなくHANABUSAがすごい」を実現するためスタッフが個性を活かし成長できる向き合い方を徹底。個の能力に頼らずチームでフォローしあいながら動ける体制を作り上げました。一方通行の教育でなくお互いを高め合う「MADE IN HANABUSA」のスタッフこそが強みです。
マネジメントで大切にしているのは、段階的にステップを示して背中を押し成功体験を積み重ねること。「目標が達成できない原因は、遠すぎて動けないから。でも何をすべきか一人で考えるのは難しいもの。そこを重点的にサポートします」 今では組織的な実行力やスピード感が強みとなり、経営側の意思決定と共にスタッフも行動できているといいます。
福利厚生も力を入れているポイント。お客様に本質的な美を届けるために、スタッフ自身の実践が大事と考え、パーソナルトレーナーによる健康管理やウェルネスサロンの割引などを用意。スタッフが一丸となって「LIBEARTY」をキーワードに、豊かな発想で「サロンの本当の価値」を追求しています。
HANABUSA
石川県野々市市御経塚1-475
076-248-8723
https://hanabusa-web.com
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