CASE
事例紹介詳細
KB’S WEB Vol.58 2026
地域との共創、地域の暮らしに寄り添う西日本のサロン
西日本は都会的な魅力と自然の恵みを感じられる、ライフスタイルバランスの良いエリア。今回取材で訪れた3サロンは、地域にある暮らしに必要不可欠な美容室という存在から、あえて美容室の様に見えない、一見お洒落なカフェ?と思ってしまう素敵なお店作りをしています。地域の暮らしに寄り添い、地域との共創を目指して、お客さまにも従業員にも愛されるサロンの在り方など、西日本エリアのサロンの進化をご紹介いたします。

「社員はお客様ファースト、会社は従業員ファースト」
感動体験を提供できるサロンを目指して
an・rata
株式会社D.ct代表取締役 古久保収亮さん
和歌山市のオフィスや飲食店が集まる中心地にある美容室「an・rata」。その最大の特徴は、カーテンで仕切られた個室の施術スペースや、アロマ・照明にこだわったシャンプースペースなど、五感に訴えるリラックス空間です。メインの客層は仕事や家事に忙しい大人の女性たち。技術はもちろん、「居心地のよさ」を感じてリピートするお客様が多いといいます。
そんな同店のオーナー、古久保収亮さんが目指すのは、「スタッフとお客様、双方がともに幸せになれるサロン」。そのため、2024〜25年にかけては、顧客サービスの向上と平行して、「スタッフマネジメントの仕組み化」に注力しました。
「会社の理念から就業ルール、価格設計、給与体系、昇給シミュレーションまで、すべてをNotion(情報を一元管理できるクラウドツール)で構築した『スタッフポータル』に落とし込みました。売上シミュレーターも活用し、数字目標を明確に提示しています。また、AIカウンセラーや匿名アンケート、月1回の面談で、スタッフの声にも丁寧に耳を傾けるようにしています」
その取り組みを始めた背景には、率直な思いがありました。
「スタッフに長く続けてほしい、という気持ちです。彼らのモチベーションが下がる理由を徹底的に考えた結果、目標や評価基準がわからないまま働くのは難しいのではないか、と思ったのです。自分がどう頑張れば給与に反映されるのか。より働きやすい環境にするためにそれぞれがすべきことは何か。スタッフがそれらをすぐに確認できる状態を目指しました」
社員はお客様ファースト、会社は従業員ファースト——古久保さんが目指すのは、「スタッフが安心して働き、お客様に感動体験を届けられるサロン」です。今後はグループ内のマツエクサロンやエステとの連携も構想。スタッフとともに、美容を通じた感動体験の輪を広げていきます。
an・rata
和歌山県和歌山市西大工町1番地
TEL:073-499-5020
https://www.anrata.tech/

美容室っぽさをあえて無くした佇まい
“滞在するサロン”という考え方
blanc.
オーナー 園田絵梨子さん
熊本県の中央付近に位置する八代市は、海から山まで広大な面積を誇り、熊本県で2番目に人口の多い都市。その北部に広がる穏やかな田園風景のなかに、ひときわ目を引く建物があります。
入り口に控えめに掲げられている店名は「blanc.」。グレーの外壁に植栽や照明を効かせた佇まいで、美容室っぽさを感じさせる看板や装飾はほとんど見当たりません。なぜ、あえて“らしさ”を消したのでしょうか。オーナーの園田絵梨子さんはこう話します。「交差点の角にあり、車で通りがかった人の目にも留まるロケーション。“なんだろう?”と気に留めてもらえたらいいと思ったんです。いまはSNSで調べてもらえる時代ですから」。
店内に入ってまず印象に残るのは、ハイスツールが並ぶカウンター。カフェのような雰囲気で、電源も充実。その向こうの棚には美容商材が整然と並び、商品を手に取りながらゆっくり選べるようになっています。「カットやカラーのためだけに来店する場所ではなく、ここでいろんな時間を過ごしてもらえたらと思っています。待っている間にパソコンを広げて仕事をしていただいてもいいですし、このカウンターでお茶を飲みながら商品を選んでもらってもいい」。
その言葉を裏付けるように、店の奥には漫画がぎっしり並んだ本棚があります。表からは見えませんが、シャンプー台に座ると自然と目に入る配置になっており、思わず手に取りたくなる仕掛けです。施術後に漫画を読みながらゆっくり過ごしていくお客様もいるといいます。
地方のサロンというと、地域の祭りとの結びつきを思い浮かべる人もいるかもしれません。この地域でも、かつては八代妙見祭の時期になるとヘアセットの需要がありました。しかし、近年は規制も厳しくなり、以前ほど関わる機会は減ってきているそうです。園田さんは「これからは、居心地のよい空間をつくり、サロンで過ごす時間を長くしてもらうことで、お客様との関係を深めていくことが大切だと思っています」と話します。
現在、セット面は4台、シャンプー台は2台。スタッフはスタイリスト2名とフロント1名の計3名体制。2024年4月のオープンから約2年が経ち、現在はリピーター中心で営業が成立。地域の暮らしに寄り添いながら、お客様との関係を丁寧に築いています。
blanc.
熊本県八代市鏡町内田698-11
TEL:0965-37-8254
https://hairsalon-blanc.com/

「利他」という考え方で全ての人を大切に
地域から愛され続けるヘアサロンへ
hair salon ao.
オーナー 植垣 努さん
兵庫県神崎郡神河町に生まれ、現在は姫路エリアで「hair salon ao.」を営む植垣さん。開業から11年、地元に根ざしながらも都市圏のサロンに引けを取らない店づくりを貫いてきました。「ローカルなエリアですから、おしゃれがしたい人は神戸や大阪へ流れてしまう。だからこそ、中心地に負けないサロンをここに作りたかったんです」(植垣さん)
その核心にあるのが、スタッフ育成への真摯な姿勢です。「技術力と人間力、どちらも大切。一人ひとりの得意分野を見極めて、時間をかけて伸ばしていきます」そんな「ao.」は現在、離職者はゼロ。「ここにいたい」と思えるチームづくりが、サービスの質を支えています。
さらに、顧客リピート率はなんと95%以上。その数字の背景には、徹底したカウンセリングへのこだわりが。「カウンセリングエラーをなくすことが最優先。シートの工夫や来店データの蓄積を通じ、お客様の意図を可能な限り正確に読み取るよう努めています」
地域との共創も上垣さんのサロンを特徴づけています。七五三や成人式では、地元の呉服屋やフォトグラファーと連携し、着付けから撮影までを一括で対応。「人とのつながりを大切に、みんなにとっていいことをつくる。それが地域を盛り上げることにもつながると思います」
その根底にあるのが植垣さんが大切にしている「利他」という考え方です。「常に『これは相手にとっていいことか』を判断の軸にしています」。そしてサロン名「ao.」はハワイ語で「夜明け」を意味しているのだそう。「利他の精神でやってきたからこそ、ここから夜明けが来る。この地域の明るい光になりたい、という意味合いで付けました」
2年後には新店舗のオープンも視野に入れる植垣さん。「スタッフ育成にさらに力を入れ、離職者ゼロを守り続けたいと思っています。人が育つからこそ、サロンも育つ」上垣さんの挑戦は、これからも地域とともに続いていきます。
hair salon ao.
兵庫県神崎郡福崎町西田原1818-1
TEL:0790-35-8001
https://rita-atorie.com/
KB'S WEB Vol.58 2026
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